ブラックショールズ式によるオプション性質のグラフ化

金融分析

今回は、ブラックショールズ式を基にオプションの性質をグラフによって直感的に理解することを目標とします。意外にもセンシティビティの3次元グラフィックをまとめているものがあまりなかったので、この記事を活用して頂ければと思います。

オプションとは

そもそもオプションとは金融商品の一つであり、ある資産を契約で取り決めたレートや価格で特定の期間後に売買できる「権利」のことを言います。「権利」と言っているので当然放棄もできるのです。

例えば、取り決めた価格(行使価格という)を100円、期間を1年としてある資産を買う権利を購入したとすると、1年後にある資産が110円になっていれば100円で買えることになるので権利を行使すれば110円-100円=10円が利益になるので権利を行使するでしょう。一方で、 1年後にある資産が90円になっていれば100円で買えるが90円-100円=-10円が損失となるので権利を行使しないでしょう。

ブラックショールズ式とは

そもそもオプションはリンゴや梨のように全く同じものが市場に流通していることはほとんどありません。リンゴはあるスーパーへ行けば「1個100円だし3個買おう」となりますし、また違うスーパーへ行けば「1個90円だし前のスーパーより安い!」とか比較ができますよね?りんごは沢山あるものであるので需要と供給のバランスによって価格が決まっているのです。

ところがオプションは基本的にそれぞれの顧客ニーズに合ったものを金融機関が生成するので、唯一無二の商品となるため価格がわからないのです(定型化されて市場で取引されているものもありますが全体の取引量に比べて割合は少ないです)。これは、リンゴが世界に1つしかなかった場合を想像してもらえればわかると思います。なのでこの価格を具体的に求める算式が必要でした。

ブラックショールズ式はこのオプションの価格を求めるために1970年ごろに数式化されたものです。導出には比較的高度な数学の知識が必要とされるため、本ブログでは結果のみを使ってグラフを作成してその性質を確かめたいと思います。

買う権利のことをコールと呼びますが、このコールオプションのブラックショールズ式による価格は下記で求まります。

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ややこしい式ですが、S:ある資産の現在の価格、K:行使価格、σ:ある資産の価格変動の激しさ(ボラティリティという)、r:金利、q:ある資産の配当率等、t:オプション取引の期間、という5つの変数に値を代入すれば価格が求まるというものです。実務ではこのブラックショールズ式では実際の価値を捉えられていないため、別の式への変換公式として使用しています。ただし、オプションの基本的な性質を捉えるには便利な式であるので、以降では実際にこの式を基にグラフを作成して性質を考えてみます。

価格の3Dグラフ

オプションでは行使価格と満期までの期間に対する価格の関係が重要視されるので、x軸:行使価格、y軸:満期までの期間、z軸:オプションの価格としてグラフにします。ただし、S=100、r=0.02、q=0.01と仮置きしてシミュレーションを行っております。

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まず、行使価格方向を見ると行使価格が小さい方が価格が大きいことがわかります。これは、上での例で示した通り「ある資産の価格-行使価格」が利益になるのでその分価格が高いと考えられます。また、行使価格が大きくなると権利放棄をすれば損失は生じないので、行使価格100~130円で満期までの期間が0年付近については、ほぼ0となっていることがわかります。

次に、満期までの期間方向を見ると期間が長い方が価格が高いことがわかります。これはコールオプションはある資産の価格が下がれば権利放棄すればよいので損失は有限であるが、期間が長ければある資産の価格が上昇する可能性も増えるので利益となる可能性もあるからです。

以上の2つの価格の性質が上記グラフより読み取れます。

センシティビティの3Dグラフ

ここからは発展なので読み飛ばして貰っても問題ないですが、オプションではセンシティビティといって各パラメーターに対する価格の変化を把握することがリスク管理や商品組成上重要となります。以下では、デルタ(ある資産の価格変化に対するオプションの価格変化)、ガンマ(デルタの変化に対する価格の変化)、セータ(満期までの期間の変化に対する価格の変化)、ロー(金利の変化に対する価格の変化)を上記価格の3Dグラフと同様に3Dグラフにまとめました。

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※本ブログに内容により発生した損失・損害については一切責任を負いませんので、ご自身のご判断でご活用いただければと思います。

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